2022年、時も世情も、刻々動いています。
そんな中、2011年から14年まで、何度もフィリピンに出かけたことを、鮮烈に思い出します。
| この本の取材です
伝えたいことは、あふれすぎて書ききれないので、本の中で。
その上で、本の中に、何度も登場しているように、重要なのは「自分で生きてゆく力」だと思う。
この力には、国籍も性別も、関係がない。
この力こそ、私たちが等しく、培わなければいけない力。
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おそらく、主に防犯上の理由から、船乗りのほとんどは男性です。 現実に、女性の船乗りや、自衛隊の女性艦長がいることを考えれば、性差別が起こっているわけではない。
そうではなく、たとえば商船の場合、現実として、アデン湾のような海賊多発地域を通ることになる。
……「海賊」と言っても、それは ONE PIECE のような世界観ではない。
装備は最新鋭で、要するに、テロリストの領域。
スピードの出る船舶に、ロケットランチャーなどの火器を装備して、大型船舶を追尾してきます。
こういう、現実的な側面もあって、雇用の大多数が「男性」という現実が。
一時期、アデン湾での護衛がニュースになりましたが、襲われないための、現実的な配慮もあります。
が、このような現実も依然としてあるため、船乗りの多くは男性。
そして、国際航路の船乗りの給料は、ちゃんと高いです。
『光の航跡』の中で商船大学は、フィリピン・ミンダナオ島に、スカウティングに行っています。
スカウト対象は、やっぱり男子生徒。
ところが……。
「ねえねえ。なんで女の子は、船乗りになれないの?」
「なんでダメなの?」
ダエル先生(向かって左)も、亀井キャプテン(右)も、たじたじ。
「……ぶっちゃけ、女の子のほうが、しっかりしてるよな」 (亀井キャプテン談)
状況さえ許すなら、女の子をとりたい。
それぐらい、フィリピンの女の子は、まじめで努力家。
生き抜くことに、しっかりとした考えを持っているそうです。
きっと、不思議なしくみになっている。
笑顔のままで、笑って人生を送るためには、力強く変わってゆかなければならない。
勇気を出して、自分の船に、乗り込まなければならないのだ。
他人の船に、便乗することはできない。それではおそらく、行き先が違ってしまうから。
安易に乗り過ごすことも、できない。
きっと、次の船が来るまでの長い時間を、岸で待たなければならなくなる。
そうしているうちに、惰性と連鎖に巻き込まれ、船出することの意味さえ、見失ってしまうかもしれないから。
『光の航跡』より
「自分が、自分の力で、自分の命を生かしてゆく」
「国が、政府が、誰かが……自分を、生かしてくれるわけではない」
「そんなことは、幻想であること」
このことを、身体全体で学んだ、フィリピンという地。
あの時の、ミンダナオ島の経験があって、本当によかった。
「誰もが、自分の命を、自分で生かす」
これが、生きてゆくということ。
私はこのことを、今、何度も心に刻みたいです。
重ねて、国が政府が……誰かが、あなたの命の主導権を握っているわけではない。
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それでは、また。
また、メッセージを書きに来ます。